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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页
「なんといわれても、おれは瀬田へ行く。放してくれ。――おい女ッ、着物が乾いたろう、おれの着物を出してくれ」
「出すなっ」
小次郎は、酔った眼を吊り上げて、
「出すときかないぞ。――これ又八、貴様武蔵とそうなるならば、一応、おふくろに会って、よく得心させてゆけ。おそらくあの老母は、そんな屈辱に、合点はすまい」
「そのおふくろを捜しても見当らないので、一先ず俺は武蔵と一緒に、江戸表へ下ろうと思う。おれが一かどの人間になりさえすれば、すべての宿怨はひとりでに解けてしまう」
「その口吻は、武蔵のいった口吻に違いない。あしたになったら、わしも共に捜して遣わすから、とにかく、おふくろの意見を訊いた上でゆくがよい。そうして今夜は飲もう、嫌でもあろうが、小次郎に交際え」
もちろん、ここは娼家、女達も皆、そういう小次郎に加勢して、又八の着物など返してくれるはずもない。
日が暮れる、遂に、夜も更ける。
しらふでは小次郎に頭も上がらないが、酔えば俄然又八は、とらになり得るのだ。見ていやがれという気で彼は宵から飲み始めた。酒の勢いを駆って、小次郎を手古摺らし、さんざん鬱憤をはらして潰れてしまった。