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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页

青空文庫

かつて。

それは姫路城の天主の一室へ、武蔵が、沢庵のために、三年のあいだ幽閉されて、陽の目もみずに書物ばかり見ていたあの頃である。

あの沢山な池田家の蔵書の中に、一冊の写本があったことを覚えている。それには、

不識庵様日用修身巻

という題簽がついていた。不識庵とは、いうまでもなく、上杉謙信のことである。書物の内容は、謙信が自身の日用の修身を書きならべて、家臣へ示したものであった。

それを読んで武蔵は、謙信の日常生活を知ると共に、あの時代、越後の富国強兵ないわれを知った。――けれど「士道」というものにまではまだ思い至らなかった。

ところがこよい、石母田外記の話をいろいろ聞いていると、政宗はその謙信にも劣らない人物と思われて来るのみでなく、伊達一藩には、この乱麻の世の中にあって、いつのまにか、幕府権力にも屈しない「士道」を生み、それを磨き合っている風が勃々として、ここに在る、石母田外記一人を見ても、分る気もちがするのであった。

「いや、思わず、それがしばかり勝手なことを喋舌ったが……どうじゃな武蔵殿。いちど仙台へもお越しなさらぬか。主人は至って無造作なお方でござる。