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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页

青空文庫

「いつから江戸表へござったな。意外な所で、お目にかかったのう」

と、助九郎は、武蔵のすがたを見て、武蔵が今なお、修行の途にまみれている様子を見て取ったようにいった。

「いや、たった今、下総領から来たばかりです。大和の大先生にも、その後、お健やかでおられますか」

「ご無事でござる。したが、もう何分、ご高齢でな」

といって、すぐ、

「いちど但馬守様のおやしきにも、お越しがあるとよい。お紹介わせもしようし……それに」

と助九郎は、何の意味か、武蔵の面を見つめながら、にっと笑った。

「貴公の美しい落し物が、お邸へ届いておるぞ。ぜひ一度、訪ねてござらっしゃい」

――美しい落し物。

はて? 何だろう。助九郎は仲間を連れてもう往来の向う側へ、大股に移っていた。

蠅

一

ここは裏町――つい今し方、武蔵の彷徨っていた博労町の裏通りである。

隣も旅籠屋、その隣も旅籠屋、一町内の半分が、汚い旅籠屋であった。

泊り賃が安いので、武蔵と伊織はそこへ泊った。ここの家にもあるが、何処の旅籠屋にも、馬舎が付きものになっていて人間の宿屋というより、馬の宿屋といったほうが近かった。

「お侍さま、表の二階だと、少しは蠅が少のうございますで、部屋をお取替いたしますべ」