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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页
御代を鎮め、世を護りたまわんがために、悪を掃い、魔を追うところの降魔の剣であり――また、人の道を研き、人の上に立つ者が自ら誡め、自ら持するために、腰に帯びる侍のたましいであるから――それを研ぐ者もその心をもって研がねはならぬぞ――と何日も聞かされておりました」
「む。いかにもな」
「それゆえ、師の光悦は、よい刀を見ると、この国の泰平に治まる光を見るようだと申し――悪剣を手にすると、鞘を払うまでもなく、身がよだつと、嫌いました」
「ははあ」
と、思い当って、
「では、拙者の腰の刀には、そんな悪気が御亭主に感じられたのではありませんか」
「いや、そうした理でもございませんが、てまえが、この江戸へ下って、多くの侍衆から、お刀を預かってみますと、誰あって、刀のそういう大義を分ってくれるお人がないのでござります。ただ、四つ胴を払ったとか、この刀は、兜金から脳天まで切ったとか、斬れることだけが、刀だとしているような風でござります。で――、てまえはほとほと、この商売が厭になりかけましたが、いやいやそうでないと思い直し、数日前から、わざと看板を書きかえて、御たましい研所と認めましたが、それでもなお、頼みに来る客は、斬れるようにとばかりいって見えますので、気を腐らしていた所なので……」