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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页
日比谷の原には鑿の音や、手斧のひびきが、新幕府の威勢を謳歌していた。――見るもの、耳に聞えるもの、伊織には、めずらしくない物はなかった。
手折るべい
武蔵の原の
りんどう、桔梗
花はとりどり
迷うほどあるが
あの娘思えば
手折れぬ花よ
露しとど
ただ裾が濡れべい
石曳き普請の石曳きたちは、おもしろそうに歌っているし、鑿や手斧が、木屑を飛ばしている仕事にも、彼は、足を止められて、思わず道草を喰っていた。
新しく、石垣を築く、物を建てる、創造する。そうした空気は少年の魂と、ぴったり合致して何となく、胸がおどる。空想が飛びひろがる。
「ああ、早く、大人になって、おらも城を築きたいな」
彼は、そこらに監督して歩いている侍たちを見て、恍惚としていた。
――そのうちに、濠の水は、茜色にそまり、夕鴉の啼く声をふと耳にして、
「あ。もう陽が暮れる」
と、伊織はまた、急ぎ出した。
眼をさましたのが、午過ぎである。伊織は一日の時間を、きょうは勘違いしていた。気がつくと、彼の足は、地図をたよりに、あたふたと急ぎ出し、やがて、麻布村の山道へさしかかっていた。
五
暗やみ坂とでも称いそうな、木下闇を登りきると、山の上には、まだ西陽があたっていた。