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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页

青空文庫

ていると、

(オオ、やはり、お通どのだ。――お通どの、お通どの)

と、路傍の人々の散らかる中を捜し求めて、後ろからこう呼び止めた人がある。

今、但馬守の駕わきに歩いていた菅笠の侍で――何と、顔を見合えば、柳生ノ庄でよく見知っている――石舟斎の高弟木村助九郎ではないか。

慈悲光明の御仏が救いの使いを向け給うたかとばかり――お通は、取り縋って、

(オ。あなたは)

と、又八を捨てて、彼のそばへ走り寄った。

その場から、彼女は、助九郎に連れられて、日ヶ窪の柳生家へ救われて行った。もちろん鳶に油揚を攫われた形の又八も、黙っている筈はなかったが、

(話があるなら、柳生家へ来い)

と、助九郎の一言に、口惜しげに唇をひん曲げたまま、例の臆心と、柳生家の名に、ぐの音もいえず見送ってしまったわけである。

三

石舟斎はいちども江戸表へは出て来なかったが、秀忠将軍の指南役という大任をうけて、江戸に新邸を構えている但馬守の身は、本国柳生ノ庄にいながらも、たえず案じているらしかった。

今、江戸はおろか、全国的にまで、

(御流儀)

といえば、将軍家の学ぶ柳生の刀法のことであり、

(天下の名人)