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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页

青空文庫

「叔父上」

と、兵庫がそこをさし覗いて、縁に膝まずいた。

宗矩は、知っていたので、

「兵庫か」

中庭の坪へ眼をやったままで答えた。

「かまいませぬか」

「用事か」

「べつに用でもございませぬが……ただお話に伺いましたが」

「はいるがよい」

「では」

と、兵庫は初めて室へ坐った。

礼儀の実にやかましいことは、ここの家風であった。兵庫などから見ると、祖父の石舟斎などには、ずいぶん甘えられる所もあったが、この叔父には寄りつく術がなかった。いつも端然と、真四角に坐っていた。時には、気の毒のような気持さえするほどだった。

二

宗矩は、ことば数も尠ないたちであったが、兵庫の来た機に、思い出したらしく、

「お通は」

と、訊ねた。

「戻りました」

と、兵庫は答えて、

「いつもの、氷川の社へ参詣に行って、その帰り道、彼方此方、駒にまかせて歩いて来たので、遅くなったのだと申しておりました」

「そちが迎えに行ったのか」

「そうです」

「…………」

宗矩は、それからまた、短檠に横顔を照らされたまま、しばらく口を緘んでいたが、

「若い女子を、いつまで邸に止めおくのも、何かにつけ、気がかりなものだ。助九郎にもいっているが、よい折に、暇を取って、どこぞへ身を移すようにすすめたがよいな」