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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

何か書こうとしても、しんから身が入らない。父の滞在は、彼のため、自分丈のためにもよろこびではあったがもう、あす、立たれると思うと、自分の心には、立たれるまでだと云う感が起らずには居ない。つまり、いろいろよけいな仕事や、心労も彼が立たれるまでで、それからは、ほんとうに自分の心持、自分の希望通り生活して行く時が来ると云う翔望である。何だか、大病人、もう死ぬとわかった大病人を、人が、親切にまめに、夜も眠らず看病するのは、斯う云う心持ではないかと思われる。もう此限りだのに思いはのこしたくないと云う心持。

十六七の時分を思い出した。生活慾がつよく、本能的に生活を享楽する。この年頃では、病人とか、いそがしさとかいうことまで一種のよろこびであった。此は顧みて面白いと思う。何か打ちこむ当のほしいとき、全精力を集注させたい精力オーセイを感じるとき、出来た病人さえ、愉快を以てあつかわれるのだ。今日は、どうかして疲れを感じ(風邪の気味)気持がひどく消極的なのでこんなことも思い出す。気候の故と見え、国男さんも風邪のよし。

夜、プリンスオブウェールス歓迎のアーチ、花電車を見に行く。