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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

あれは……」

と言って、掛長が、あとのことばを、口の中にのんだ。その刹那に、掛長は、鋭敏に、何ごとかを感じたようであった。

「あれは! あれは、どうかしたのか」

と、大江山課長も席から立って、掛長のそばによった。

「あれは、今朝、放免いたしました」

「なに、千二少年を留置場から出したのか。ほう、一体、誰が千二少年を出せと命令したのか」

「これは驚きました。課長が、今朝ほど、電話をこちらへおかけになって、放免しろとおしゃったので、それで、出したようなわけですが、もしや課長は、それがまちがいであると……」

「大まちがいだよ、君」

と、大江山課長は掛長の肩に手をかけて、ゆすぶった。よほど、あわてたものらしい。

「おい君。私は、そんな電話をかけたおぼえがないんだ。その話をくわしくしてくれたまえ」

「いや、それは驚きましたな」

と、掛長は、あきれ顔でその先を語り出した。

その話の要点は、つまり、今朝ほど、全く課長にちがいない声でもって、電話があったというのに過ぎなかった。その声も、言葉のしゃべり方も、全く課長にちがいないので、

「すぐ千二少年を放免しろ」というその命令にしたがったのだという。