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かせいへいだん
火星兵団
海野 十三
「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页
そんな恐しいことがあっていいだろうか。いや、人類の好くと好かないとにかかわらず、現にモロー彗星は、刻々地球に追っているのだ。
「助かる方法はないでしょうか、博士」
蟻田博士は、だまって、鉛筆で、白い紙のうえを叩いている。
「ねえ、博士。モロー彗星のため地球がぶち壊されても、何とかして、我々人類が助る方法はないものでしょうか」
「ないねえ。絶対に助る手はない」
博士は、他人のことのように言う。博士はどうなるのか。博士だって、やはり人類である以上、一しょに死ぬのではないか。それとも、自分だけは助るつもりであろうか。
「先生は、生命を全うされますか」
「いや、むろんわしも死ぬさ」
博士は、新田め、何をわかりきったことを聞くのだと、言いたげな顔であった。
新田先生の最後の頼みの綱も、ついに切れた。先生は、千仭の断崖から、どんと下へ突落されたように思った。もう立っていることが出来ないほどだった。
(だが、――)
と、新田先生は、その時口の中で言った。
(だが、万物の霊長たる人間が、そうむざむざと死滅してなるものか!)
人間というものは、どうにも、もういけないときまった時に、不思議にも、それをはねかえす力が出て来るものである。