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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

「さあ、今のうちだ」

新田先生は、蟻田博士の机から、鍵を取出すと、いそいで廊下へ飛出した。その奥には、博士が秘密にしている部屋がある。

恩師の秘密にしている部屋を、その許もなくて、ぬすんだ鍵であけてはいるなんて、けっしていいことではなかった。しかし、ぜひともそれをしなければ、気のすまない新田先生であった。

先生には、一つの信念があったのである。それは、秘密室へしのびこむのは、悪いことではないと信じていたのだ。なぜならば自分だけがとくをするために、むやみに他人の秘密室にはいるのは、どろぼうみたいなものである。しかし新田先生は、自分だけのとくを考えているのではない。そうすることによって、地球の全人類を、だんだん迫って来た大危難から救う道を発見したいのであった。どろぼうみたいなまねをするにはちがいないが、その気持は実に正しく、そうして尊いものであった。

「さあ、この鍵で、この部屋があくはずだ。どうかあいてくれますように」

先生は、心の中で祈りながら、秘密室の鍵穴に鍵を入れてまわした。

すると、がちゃりと錠のはずれる音がした。

「しめた!」

先生は、喜びの声もろとも扉をおして、中へ飛込んだ。