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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

博士は、気のどくなくらいがっかりして、

「たった一日でいいが、貸してくれんか」

「いや、だめです」

「じゃあ、もう十分か二十分か見せてくれんか」

「だめです。お断りします」

「そんなら、ぜいたくは言わない。もう五分間見せてくれ」

課長は博士の頼みをあくまでもしりぞけた。そうして箱にふたをしてしまったけれど、箱を元の金庫にしまうことはしなかった。

「ねえ、博士」

博士は、箱をじっと見つめて、よだれをたらさんばかりであった。返事もしない。

「ねえ、博士。さっきあなたは国際放送をお聞きでしたか。地球がモロー彗星に衝突するという……」

課長のこのだしぬけの質問は、博士を驚かせるに十分であった。

「なに、地球がモロー彗星に? そんなことは、わしには前からわかっていたが、誰がそんなことを君の耳に入れたのか」

「国際放送ですよ。ロンドンとベルリンとからです。どっちもりっぱな天文学者が放送しました」

「ふうん、そうか。あいつらもやっと気が附いたとみえるのう。それで、わが日本では、誰が放送したのかね」

「まだ誰も放送していません」

「なぜ放送しないのかね。号外は出たのかね」

「いや、どっちも今、報道禁止にしてあります。