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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

つまり、その時たずねて来た人の顔を、後のために、ちゃんと残しておく必要があるような時には、よくやる手であった。警官は、またその写真かと思ったのである。

課長は、衝立のかげから、自席の方を注意している。

その時、警官が課長の耳の近くに口をよせ、早口で言った。

「あっ、課長。あの老人が変なことをやっていますよ。いいんですか」

「ああ、いいのだ」

「あっ、課長の机の上にある箱の中から、何か長いものをひっぱり出しましたよ。大丈夫ですか」

「うん、いいのだ」

いいのだ、いいのだと言っているうちに、蟻田博士のからだは、課長の机を離れた。そうして、戸口の方へ、早足で、つつうっと歩いて行く。どうやら、博士は逃げるつもりらしい。

「いいんですか、課長。あの老人は太い奴ですよ。課長の机の上から、何か盗んで行きますが、いいのですか」

蟻田博士は、うまうまと、青い色のむちのようなものを、大江山課長の机上から盗んでしまった。それは、課長が、千葉の天狗岩の附近から拾って来た貴重な証拠物であった。

不思議なことに、課長は、博士がそれを盗むところを見ていて、何もしないのであった。わざわざ博士に盗ませたようなものであった。