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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

一体、どうしたんだろう。

博士の姿は、もう室内に無かった。

「課長、追いかけて、あの老人の襟首をつかまえて、連れもどして来ましょうか」

「いや、それにはおよばない」

「じゃあ、追跡しましょうか」

「いや、それも必要ないよ」

と言って、課長は、衝立のかげから、ゆったりと姿をあらわし、自席へ帰って行く。

「なんだか、さっぱりわけがわかりませんなあ。課長さえよければそれでいいんですが、みすみす、庁内の現行犯のどろぼうを逃してしまうなんて、一体どういうわけなんですか」

課長は、別に、それに対して返事はしないで、

「おい、どうした。まだ、佐々は、帰って来ないのかね」

と、佐々刑事のことをたずねた。

「佐々なら、もう、こっちへ帰って来るはずですが……」

と、掛長が、席から立って来た。そうして課長に向かい、

「あの博士は、とうとうあれを持って行ったようですね」

と言えば、課長は軽くうなずいた。

そこへ、戸口が大きな音と共にあいて、佐々刑事がとびこんで来た。

「課長、帰って来ました。ところで、今、蟻田博士にすれちがったのですが、あの博士の様子が、いやにへんなんですがねえ」

「佐々。