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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

春なおあさい掛矢温泉の岩にかこまれた浴槽の中に、新田先生は体をのびのびと伸ばして、はや二、三日を送った。

温泉のききめは早い。先生の体から、病後の疲れが見る見る去っていって、頬にもくれないの色がさして来た。

「ああ、ありがたいことだ」

先生は浴槽から上って、手ぬぐいをぶらさげたまま、部屋に帰って来た。

すると、その後からこの旅館の老主人弓形氏が、お茶とお菓子とを持ってはいって来た。

「温泉はいかがでございましたかな、新田先生」

「ああ、ありがとう。今日はまたかくべつないい入り心地でしたよ」

「それは、けっこうでした。まあお茶でも入れましょう」

老主人は鉄びんの湯をきゅうすについで、手を膝においた。

「御主人に、この前からうかがおうと思っていたのですが……」

と言いながら、新田先生は、ぬれ手ぬぐいを欄干にかけて、自分の席へ戻って来た。

「はあ、どのようなことで……」

「ゆうべも見えましたがね、温泉につかりながら、真暗な山を見上げていると、こっちの方向にある山の上の方に、ちろちろとうす赤い火が見えたり消えたりするんだが、あれは一体、何ですかね」

「はあ、あの火を、ごらんになったのかね」