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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

科学国ドイツの技術を総動員しても、火星人のつくった宇宙艇には、かなわなかった。

モロー彗星は、いよいよ近づいた。

地球から見ると彗星の頭は満月の二倍ぐらいに大きくなった。

夜分だけしか見えなかったその彗星は、このごろでは、昼間も空中にうっすらと姿が見えるのであった。

地上の人間は、日毎夜毎にモロー彗星の怪奇な姿におびやかされ、神経衰弱にならない者はないと言っていいほどであり、おかしくなる者が平年の百倍千倍にもふえていった。

モロー彗星の尾は気味のわるい青白い光を放った。天空を大きな川のように流れていたが、その形はいつも同じではなく、風にふかれる煙のように方向が変り、形が変った。それは太陽の影響によって、ふき飛ばされるのだと学者は説明した。

このような、怪しげな天空の下に、地上の人々がだんだん望を失って来たのも、無理のないことであった。

しかし、いつの世にもそうであるように、どんな悪い世の中のありさまの時にも、決して負けない人間もいた。いや、かえってそういう苦しい困った時に、元気や勇気が出て来る人間がいた。

日本人とドイツ人とイタリヤ人とアメリカ人とは、なかなか勇敢な人種であった。