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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

とたんに「あっ」と叫んだ。

驚くのも道理、いつの間に忍び寄ったか、そこには、黒装束の火星人が立っていたのだった。

先生はぎょっとした。いつの間に、火星人がこんなところまで、はいって来たのであろうか。全く、ゆだんもすきもあったものではない。

「博士、火星人がここにいます」

先生は、ぱっと身をひるがえして駈出しながら、博士のうしろを追いかけた。

「わ、は、は、は、は」

と、火星人は大声で笑った。

先生は、もうだめだと思った。そこで、博士からあずかった十号ガスのピストルを、火星人の方へ向けて、

「さあ、これを食って往生しろ!」

と言うなり、引金を引いた。

ぱさっと音がして、ガスピストルはガスを撃出した。

黄いろい煙があたりに広がった。

「わ、は、は、は、は」

火星人は煙の中から笑う。

「しまった!」

先生は、もう一度、ガスピストルの引金を引いた。

ガスは、またばさっと音がして、火星人の方へ飛んで行って、もうもうと広がった。

「もうよせ、もうよいよ。わ、は、は、は、は」

と、十号ガスの中で、火星人は苦しそうに笑いながら叫んだ。

十号ガスでまいらない火星人だ!

これではせっかく蟻田博士の発明した十号ガスも、さっぱり威力がないのだとわかると、先生はがっかりしてしまった。