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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

千二は薬剤師らしい白い服を着た店員に、

「あのう、ボロンの大壜を二、三本売ってくれませんか」

と、おそるおそる言った。

「ボロン? ボロン? 硼素のことですか」

「さあ……」

「白い粉末になっているやつでしょう」

「さあ、どうですかねえ」

千二は、何も知らないので、弱ってうしろをふり向いた。すると、店先で、他人をよそおっていた丸木が、

(それだ、それだ)

という意味を千二につたえるため、うなずいてみせた。千二は、元気づいて、

「ああそれですよ。白い粉末のボロンです」

「精製のものと、普通のものとありますが、どっちにしましょうか」

「さあ、精製のと普通のと、どちらがいいのでしょうかねえ」

千二は、またうしろをふり返った。すると丸木は、手を上にあげて、信号をした。精製の方のがいいという意味らしい。

「いい方を下さい」

「はい、承知しました。三本でよろしいのですね。では一本、ただ今二円三十銭ですから、三本で、六円九十銭いただきます」

「六円九十銭ですとさ」

千二は、丸木の方をふり返って、そう言った。

すると、おもいがけなく、丸木が急に、そわそわしだした。

たいへんあわてているのであった。