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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

彼はしきりに胸のところを叩いている。何かよほど困ったことがあるらしい。

「丸木さん、一体どうしたの」

千二は、丸木のところへやって来て、わけをたずねた。

丸木は、いかめしい姿に似合わず、ひどくあわてている。その様子が、ますますはげしくなった。

「おい千二。お前、金を持っていないか」

「僕? 僕は、お金なんかすこしも持っていない。なにしろ、魚をとりにいくために家を出かけたので、お金なんか一銭も持っていないですよ」

「そうか。それは、どうも困った」

「丸木さんは、お金を持っていないの。なくしたんですか」

「いや、お金のことは知っていたが、ついそれを用意することを忘れた。そうだ、買物をする時には、お金がいるんだったなあ。ああ、大失敗だ」

丸木は、ひとりでさわいでいる。

「じゃあ、ボロンを買うのは中止ですね」

「それは困る。どうしても、ボロンを買っていかなければ、困ることがあるのだ」

丸木は、今はもう自分に代って、千二に用事をしてもらっていることが、がまん出来なくなった。彼はいきなり薬剤師の白い服をつかまえ、

「ねえ君、金はあとでとどけるから、ボロンを渡してくれたまえ」

薬剤師はおどろいた。