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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

いきなりお客さんに、自分の服をひっぱられたのだから。

「あっ、そう乱暴しちゃ服がやぶれますよ。はなして下さい」

「ぜひ、ぜひボロンをたのむ」

丸木は、必死であった。

「いや、いけません」

年のわかい薬剤師はすこし怒っているらしく、きっぱり丸木のたのみをしりぞけた。

「そう言わないで。あとから君にも、たっぷりお礼をする」

「いや、だめです。お金を持って来なければ、ボロンでも何でもお渡し出来ません」

「どうしても、だめか」

と、丸木はうらめしそうに、薬剤師をにらみつけた。

「お金を持って来ない人に、どんどん薬を上げていたのでは、商売になりませんや。じょうだんじゃありませんよ」

と、若い薬剤師は、丸木にからかわれたとでも思ったのか、本気になって、怒っている。

「ふふん。どうしてもだめか」

丸木は、あらあらしい息で、またうなった。全く気味のわるい人物である。

「ああ金! 金さえ持って来れば、ボロンを売ってくれるんだな」

「もちろんですよ。たった六円九十銭ぐらいのお金に、おこまりになるような方とも見えません。じょうだんはおよしになって下さいよ。本気のお買物なら、もう午後九時も近くなりましたから、早くお願いいたします」