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かせいへいだん
火星兵団
海野 十三
「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页
丸木の歩調が、少しばかり遅くなった。彼はしきりに、いろいろなものを売っている店先に、目を向けている。そこには、美しく飾られた飾窓をのぞきこんでいる人もあれば、中で何か買物をしている人も見える。
「ああ、金だ、金だ」
丸木は、時々ひとりごとを言った。
そのうちに、丸木はぴったりと足を止めた。
「どうしたの、丸木さん」
「しっ、だまっておれと言うのに……」
この時丸木の目は、大きな鞄店の中で、りっぱなハンドバッグをたくさん前に並べ、どれを買おうかと、しきりに見ている一人の年の若い、洋装の女の上に釘づけになっていた。
やがて、その洋装の女は、中で一番りっぱな鰐革のハンドバッグを買った。その時かの女は、抱えていた白い蛇の革のハンドバッグの中から、たくさんの紙幣をつかみだして、店員に支払った。
「ああ金だ。たくさん金を持っている」
丸木は、またうなった、そうして、買物をして出ていくその洋装女の後姿をふりかえって、じっとみつめていたが、
「おい千二。ここで待っていてくれ」
と言った。
丸木は、千二に向かって、ここに待っていてくれと言うのだ。
「ああ、待っていますよ」
千二は、ひょっとすると、この間に、丸木の手から逃出すことが出来はしないかと思ったので、そう返事をした。