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かせいへいだん
火星兵団
海野 十三
「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页
そう言っている時、お医者さまが、
「あっ、うまいぞ。口を動かしはじめた。注射がきいて来たのかもしれない」
と言ったので、隣室につめかけている者も、それを聞いて、よろこびのこえをあげて、千蔵のまわりに集って来た。
「ああっ、ああっ」
千蔵は苦しそうに声をあげ、そうしてうす目をひらいた。
「さあ、千蔵さん。しっかりするんですよ」
と、お医者さまは、千蔵の手を、かるく叩いた。
「あっ、火柱だ。湖の中から、火柱が飛出した。あっ、火柱が飛ぶ。火柱が飛ぶ」
千蔵は、へんなことを口ばしって、そうして身もだえをした。
「おい、千蔵どん。気をしっかり持つんだよ」
「おい千蔵さん。わしが見えないか」
素朴な近所の人たちは、気の毒な千蔵をとりまいて、しきりに声をかけた。
お医者さまは、それをとどめて、
「ちょっとお待ちなさい。千蔵さんは、よほど興奮しているようですから、それがおさまるまで、また元のところで、しばらく様子を見ていて下さいませんか」
そう言ったので、皆は元の隣の部屋にうつった。新田先生も、それについて、千蔵の枕元から去ったが、先生は、
「はてな」
と言って、じっと腕ぐみをして、考えこんだ。