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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

「わかったわ!」

「わかって? 誰あれ?」

「あれはね、屹度、今度二丁目の市村座に掛るという、大坂下りの、中村菊之丞の一座の若女形、雪之丞というのに相違ないでしょう――雪之丞という人は、きまって、どこにか、雪に縁のある模様を、つけているといいますから――」

「ほんにねえ、寒牡丹を繍わせてあるわ」

と、伸び上るようにして、

「一たい、いつ初日なの?」

「たしか、あさッて」

「まあ、では、じき、また逢えるわねえ。ほ、ほ、ほ」

「いやだ、あんた、もう贔屓になってしまったの」

二人の娘は、笑って、お互に袂で撲つまねをしながら、去ってしまった。

美しい俳優は、そうした行人の、無遠慮な囁きを、迷惑そうに、いつか、諏訪町も通り抜けて、ふと、右手の鳥居を眺めると、

「おや、これは八幡さま――わたしは、八幡さまが守護神――ねえお前は、この、お鳥居前で待っていておくれ――御参詣をして来ますから――」

と、供に言って、自分一人、石段を、小鳥のような身軽さでちゃらちゃらと上って行った。

八幡宮の、すっかり黄金色に染って、夕風が立ったら、散るさまが、さぞ綺麗だろうと思われる大銀杏の下の、御水下で、うがい手水、祠前にぬかずいて、しばし黙祷をつづけるのだったが、いつかれる神が武人の守護神のようにいわれる八幡宮、おろがむは妖艶な女形――この取り合せが