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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

七

と、いうところが、きっかけで官女たちが大勢つどっている場に、出現するわけなのだ。

揚幕が上って、彼は、かけごえに迎えられて、花道をふんで行った。

七

雪之丞の官女が、花道の七三にかかって、檜おうぎをかざしたとき、東桟敷の紫幔幕の下に、そッとつつましく坐った、高島田の美女のひとみに、ありありと、讃嘆のかがやきが漲った。

「ふうむ、見事じゃ」

と、吐息に似たつぶやきが、三斎老人の唇から洩れた。

「何と、所作ぶりも、達者だの」

と、横山が、扇で、手の平を打つようにした。

息女浪路は、横山の方を、満足げにかえりみた。

横山が、その目を捉えて、

「な、浪路どの、あでやかなものでござりますな」

「ほんに、わたくしも、ゾーッと背すじが冷たくなりました」

浪路は、美しい口唇を、いくらか引き曲げるようにして告白した。

雪之丞が、あらわれて、鳴り物も、うた声も一そう際立って聴えて来た。

観客席には、今や、ささやきさえ聴えなくなってしまった。人々は固唾をのみ、瞳を見据えるようにして、見入りつづけるのだった。

その幕がしまると、人々の咽喉から、喝采のかわりに、深い嘆息が出た。

「いいなあ」