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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

一一

お初は、そんな冗談口は耳にも止めず、かまわず間近な、三斎屋敷の方へしとしとと歩いている。

彼女も亦、闇太郎同様、この権門の財宝を狙っているものにきまっていた。

一一

黒門町のお初は、しなりしなりと三斎屋敷の門前に近づいたが、扉こそとざされておれ、耳門はまだ閉っていないらしく、寝しずまるには、間があるようだ。

――宵っぱりな家だの――お客か? が、そんなこたあ、こっちには、何のかかわりもありはしない。

いつぞや、闇太郎がしたように、この女も、塀に沿うて、まわり出した。越すに易い足場のいいところを見定めようとしているのだろう。

このお初というのは、以前は、両国の小屋で、軽業の太夫として、かなり売った女だった。

足芸、綱渡り、剣打ち、何でも相当にこなして、しかも、見世物切っての縹緻よし、身分を忘れて、侍、町人、随分うつつを抜かすものも多かった由だったが、いつの間にか、その引く手あまたの一少女の、青春の魂を囚えてしまったのが、界隈によく姿を見せる、いつも藍みじんを着て、銀鎖の守りかけを、胸にのぞかせているような、癇性らしい若者――

いずれ、やくざに相違ないと知って、出来合ってしまったところが、これが賭博うちと思っていたのに、東金無宿の長二郎という名代の泥棒――