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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

三

つまり、雪之丞によって、浪路をうごかし、広海屋よりも一あし先に御用允可のはこびをうけたいのである。

雪之丞は、万事、のみこんだというように、

「それはもう、あなたさまのためには、叶いますだけはいかなことなりと――」

三

長崎屋は、言葉せわしく、胸の一物を、概略ながら、雪之丞に囁いてしまうと、

「そなたは、こころの聡い方、大ていのみ込んでくれたであろ。不思議な縁で、したしくなったからは、わしが良ければそなたにもよし、そなたがよければ、わしもよいというようにやって行って貰いたい。な、頼みますぞや」

「ようくわかりましてござります」

と、雪之丞、うわべは、どこまでもやさしく、

「あなたさまも、幾久しく御贔屓を――」

「いうにゃ及ぶじゃ」

と、相手は、トンと胸を打って、

「では、今夜は、根岸の鶯春亭でまっていますほどに、閉ねたらすぐにまいッてくれ。乗りものを待たせて置きますぞ」

言葉をつがえて、長崎屋、楽屋を出て行く。

――あの人は、骨の髄まで慾念で固まった、この世ながらの獄卒だ。とはいうものの、あの人みずから、わしの望みの手引きをしながら、好んでだんだん死地に近づいてゆこうとするのも、みんな因縁というものであろう。