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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁
一二
「だが雪之丞、申すまでもないことだが、桟敷に、土部三斎を始め、どのような顔を見たとても、構えて心の動きを外に出してはなりませぬぞ。そなたの腕なら、舞台から笄を投げても、三斎めの息の根を止めることは出来ようが、それでは、望みの十分の一を、達したとも申されぬ。その辺のことを、ようく思案して、そつなく振舞うように――」
雪之丞は、青ざめて、美しい前歯に、紅い唇を、噛みしめながら、懇ろな師匠の言葉に、素直に肯首ずいているのだった。
「いつか、夜も更けたようだ。そろそろ床を敷らせようか?」
と、師匠がいって手を鳴らした。
一二
雪之丞が師匠の次の間に延べられた、臥床の中に、静かに身を横たえて、
――何事も思うまい。お師匠さんの仰言る通り、じっと怺えて、いざと言う場合まで、自分の力を養って行く他はないのだ。気を嵩ぶらせてはならぬ。女の子のように、めそめそしてはならぬ。また、じりじりと焦ってもならぬ。姿こそ、変生女性を装っては居れ、胆は、あくまで猛々しいわたしでなければならぬ。眠ろう――
と、胸の上にそっと手を置いて、呟いて、やっとうとうとと、まどろみ始めた頃のことであった。