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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

三

そして、元の座に戻って、

「雪之丞、まいれ。遣わすぞ」

その一巻を、壇下から、震えるばかり白い手をさし伸べて、受けようとする雪之丞、師弟の手が触れ合おうとした、その刹那だ。

道場外に声があって、

「その御伝授、お待ち下さい」

と、切羽詰まって、荒々しく響いた。

開き扉を音高く開けて、走り入って来たのは、大坂以来、一松斎につききりの一の弟子、師範代を勤める、門倉平馬という、髪黒く眼大きく、面長な、やや顎の張った、青白い青年だった。

「お待ち下さい、先生――」

と、彼は、雪之丞と押し並んで坐って、遮るように手をさし伸べた。

三

突然の闖入者門倉平馬、必死の形相で、またも叫んだ。

「先生――お止まり下さい。その一巻の披見、雪之丞にお許し、お止まり下さい」

雪之丞は、伝書を受け取ろうと、伸べた手を、思わず引いたが、師匠一松斎は、ただ静かな瞳を、平馬に向けただけだった。

「日頃にもない平馬。その乱がわしさは、何事だ」

「何事とは、お情ないお言葉――」

と、平馬は、血走った目つきで、師匠を睨め上げる様にしたまま、

「かねがね仰せられるには、独創天心流には、奥義も秘伝もない、自ら学び、自ら悟るを以て、本義となす、――と、繰返しての仰せ、それを何ぞや、この場にて、門下とは申せ、言わば列外の雪之丞に、秘巻拝見をさし許されるとは、あまり