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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

五

「悪あがきをするッて、あたしが逃げ出しでもするというのかえ?」

お初は、おかしそうに笑った。

「考えても見るがいい。この息抜きもないような窖で、出入口は、厳重な木襖じゃあないか――それを、ぴッたり閉めて、錠を下されたからにゃあ、たとえ、あたしが忍術使いだって、脱けられッこはないじゃないかね?」

「だって、おめえは、軽業お初とも、異名を取った、途方もなく身軽な女の子だというから――」

「いかに身軽なあたしだって、厚い木ぶすまは、どうにもならないよ」

「じゃあ、安心して酒買いに出かけて来るか?」

「ああ、安心して、行って来さッし」

と、問答があって、法印、やっと決心がついたように、空徳利を提げて立ち上った。

問題の木ぶすまを開けて出て、振り返って、おぼろな、裸火で、じっと、お初をみつめて、

「ほんとうに、大人しくしていてくれなきゃあいけねえぜ」

「駄目を押しすぎるよ、いい悪党の癖にさ――」

法印は、ニヤリとして、締りをしめると、太い止め釘を、ぐっと差し込んだ。

ギチリギチリと、重たいからだが吊し梯子を踏んで上ってゆく。

その気配を聴きながら、お初は微醺を帯びた目の下を、ひッ釣らせて、ニヤニヤした。