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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

一〇

雪之丞は、そう言われると、まるで、手を下さずに、このひとを殺して行くような気がして、何とも言えぬ罪科を感じないではいられぬのだ。

「でも、この人は、言っているんだぜ。おめえに逢って、ほんとうの色恋ッてものを知ったのだからかなしいけれど、満足だって――もう、命脈が、たえかけていることもちゃあんと知っていなさるんだ――さあ、雪さん、何とか、言ってやんねえな――医者を呼ぶより、薬より、それが一ばんだ――生きけえるものなら、おめえの一声で生きけえる――なあ、何とか言ってやれよ!」

闇太郎しきりに気をもんでいる。

雪之丞は、背けたかおを、のぞき込むようにして、

「浪路さま! 浪路さま! わたくしでござりますぞ! 浪路さま!」

それこそ、このまま、灰白く、凍って行ってしまいそうにも見えた、まぶたが、かすかに動いた。ある痙攣のようなものが、窶れ果てた美女の口元をただよって、そして、やっとのことで、いくらか目が開けられた。

雪之丞は、顔を近々と、迫ったこえで、

「浪路さま! 浪さま! 雪之丞で、ござりますぞ! おわかりになって下さりませ!」

「いいえ」

と、いうように、彼女は、死色を呈しながら、かぶりをふるようにした――出来るなら、近づけられた顔を、遠のけたがっているようである。