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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

二

――ドン、ドン、ドン、ドン――

無遠慮に雨戸を打ち叩きながら、太いこえが、呼ばわっているのだ。

「このおうちに、大坂役者が、泊ってはいないかな! 大坂役者、雪之丞――」

闇太郎は、振り返って、

「何かと思ったら、おめえをたずねて来たものがあるらしいぞ――おめえの名を言っているが――」

「いまごろ、何人が?」

「そら、言っているだろう――聴くがいい」

外のこえは、つづいている――

「大坂役者の雪之丞どの、用のあるものが来たのだ――」

「おッ! なるほど、たしかに、わたしに――」

と、雪之丞の、美しい眉がひそむ。

「待っていなせえ。おれが、のぞいて来てやろう」

深夜の、雨戸の音――もしや、自分をいつ何どき襲って来るかもわからぬ、怖ろしい敵の手が、迫ったのではないかと、渡世柄、ハッと、心を引きしめたらしい闇太郎、そうでないとわかると、すぐに階下へ出て、やがて、はしごを表口の方へ下りて行った容子だ。

寝入りばなの家人は、まだ、起き出さぬらしい。

雪之丞も、おのずと、聴き耳が立つ。

階下のこえ、闇太郎が出て行ったので、低くなったので、ハッキリとしなくなったが、気になるので、雪之丞、はしごの下り口まで出て行った。