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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁
一一
「ねえ、浪路さま、しっかりあそばして、快くなって下されませ――な、その中に、屹度、楽しい日もまいりましょうほどに――」
彼は、こうした言葉が、とてもこの世ではかなわぬ夢を語っているのだとしか思われない。そしていつわりを口にせねばならぬ自分を、責めずにはいられぬ。けれども、彼自身の魂の奥底を、そのとき流れている真情に嘘はないのだった。
――そうだ! 来世で、わしたちは仏合せになれるかも知れぬ――未来というものがあるならば、そして、父さまも、母さまも、先きの世では、このひとと、したしくすることを、許してくださりもしよう。
「雪――雪どの――」
浪路の口元が、そう動いて、凹んだ目には、涙が一ぱいにあふれかけていた。
「わたしは、早う、失せとうてならぬ――死んでしまえば、魂とやらのみのこるという――そうしたら、いつもいつもそなたと一緒にいられるほどに――」
そう言ってしまうと、もう、精魂もつき果ててしまったように、彼女は、目をつぶった――涙が、見栄もなく、目尻から流れて、雪之丞の手先をやっと握っていた指が、異様に痙攣しはじめた。
「あッ! いけねえ」
と、法印が、あわてたようにいった。