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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁
六
、一行の名前を、茶屋の者よりうけたまわって見たところ、案にたがわず、当節、病気にてひきこもり中の、広海屋主人をのぞく外は、江戸に集まって、昔の不義不正を知らぬ顔に、栄華をきわめておるやから、ことごとく、あの、紫幕ばりの下に、大きな顔をして見物というわけ――」
――う――む――
と、いう、激しい心のうめきを、強いて、抑えるように、雪之丞は、白い前歯で紅い下唇を噛みしめたまま、瞳をこらして、師匠をみつめつづけている。
菊之丞は、いよいよ、声をひそめて、
「土部三斎、隠居して、ますます栄耀の身となったゆえ、もはや、旧悪が暴露するうれいもないと考えているのであろう、一味の奴原が、われとわれから、そなたの面前に、みにくい顔をさらして見せたも、こりゃ、亡き父御の引き合せに相違ない。心をしずめて、めいめいの面体見おぼえるがよろしかろうよ」
「は、して、まそっと詳しゅう、居並ぶ人々の、順、なりふりをお聴かせ下さりませ」
雪之丞は、乾いた舌で嘆願するのだった。
六
菊之丞は、あたりを見まわすようにして、ぐっと、身を乗り出して、
「忘れまいぞ、雪之丞、向って右のはしが、あの頃の長崎代官浜川平之進、左のが横山五助、そして、息女浪路のうしろに控えた、富裕らしい町人が、そなたの父御が、世にも信用の出来る若い手代と頼んでいたに、その恩を忘れ