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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

闇太郎は八端がらの、あまり大きくない座布団を、雪之丞のために進めた。

「ごらんの通り、さっ風景な住居なんで、おかまいは出来ませんが、そのかわりどんな内緒ごとを大声でしゃべっても、聞く耳もねえ。あっしはこれでも堅気一方な牙彫師というわけで、御覧の通り、次の間は仕事場ですよ」

闇太郎は面白そうに微笑して、合の襖をあけて見せた。

行灯の灯がさし入る小部屋には、なるほど厚い木地の仕事机、いちいち鞘をかけた、小形の鑿やら、小刀やらが、道具箱のなかにおさまっているのが見えた。現に机の上には、根付けらしい彫りかけの象牙が二つばかり乗さっている。

「あなたは、なんでもお出来になる方と見えますな」

雪之丞がそういうと、闇太郎はいくらか、きらりとしたような瞳を、一瞬間相手になげて笑いだした。

「こいつあいけねえ、実は、お前さんはまだあっしの身の上を、なんにも御存じねえと踏んで今夜こそ打ちあけ咄もし、また伺いもしてえと思ったのだが――」

彼は、別に声をおとしもせず、

「それじゃあ、お前さんは、あっしが闇太郎とかいうあだ名をもった、泥棒だっていうことをしりながら、平気でわざわざついてお出でになったんですかい」