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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁
おれは、代々、僅少な扶持をもらって、生きている為に、人間らしい根性をなくしてしまった、侍という渡世が、つくづく厭になったんだ。それで五平を叩っきりそこなうと、すぐその場から、おさらばをきめて、それからはお定まりの、憂き艱難というやつさ。身体は身軽、年齢は若し、随分乱暴な世界を平気で歩いたが、しかし、まだそのころは、泥棒だけはしなかったよ」
闇太郎はそこまで話してきて、火鉢の火を見詰めるように、うつむいている雪之丞を見て、
「どうも、あんまり結構な話でもねえ。面白くねえだろうから止めにして、台所には白鳥が一本おったっている。熱燗をつけて、これで中々好い音声なんだ。小意気な江戸前の唄でもきかせようか」
「どうぞ、お差支えがなかったなら、もうすこし話してくださいまし。わたしも、身につまされることもあるのですから」
と、雪之丞が顔をあげて、いくらか翳ったような瞳で、相手を見上げた。
晩秋の真夜中の風が、田圃を吹きわたして、背戸口の戸をかすかにゆすぶっていた。
「そうか、じゃあ、もう少し聞いてもらおうか」
と、若き盗賊は、ふたたび話をつづけた。
一一
闇太郎が、それから例の鉄火な口調に、しんみりした侘しさもまじえて、話しきかせたのはおおよそこんな事であった。