輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

実のところついそこに、迎えのかごを待たせてありますゆえ、御容赦――」

そう、いい捨てて、雪之丞は、小走りに外へ出てしまった。

「感心なお方――」

「ほんとうに程のよい――」

見送りに出た芸者、女中が、そんな風に囁き合うのを聴き流し巷路の闇にまぎれ込むと、闇の夜風が、鋭く頬を撫でる。

あたりは、杜と、茶畑、市の灯りからはるかに遠い根岸の里だ。人ッ子一人に出逢いはせぬ。

木下蔭の暗がりで、長裾をぐっと引き上げ、小褄をからげ、お高祖頭巾をまぶかにして帯の間に手をやると、師匠が返してくれた一松斎譲りの銘刀が、体熱に熱くなって、一刻も早く血が吸いたいというように渇している。

――おまちよ、もうすこしすると、渇きを止めてやりますぞ。

身支度をすませて、細道に出ると、向うに、遠火事の炎が映っているように見えるのは、まぎれもなく、たった一度客すじから招かれて行った、新吉原の灯のいろに相違ない。

彼等が、そこを指して押し出す下ごころを知り抜いている雪之丞、とある杜かげにじっとたたずんで、時のうつるのを待とうとするのだった。

すると、ふと、その中に、むこうからトボトボと近づいて来た、細長い人影――雪之丞が身をひそめた、つい側まで来て、ピタリと草履の音を止めた。