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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

折角、あいたいと申すのじゃ。つい、ちょっと、病室をのぞいてやってくれまいか」

「ま、勿体ないお言葉――」

と雪之丞は、どこまでも、礼を忘れぬ風で、

「いやしき河原者、身分ちがいの身にて、御女儀さまのお居間へなぞ――全く以て思いもかけませぬ――」

「その物がたさは感じ入るが――しかし、相手は病人じゃ」

と、三斎は心安げに笑って、

「ま、望みを叶えてやるよう頼む。老いては子にしたがえ――とか、申すが、このわしは、とりわけ彼女が可愛ゆうてな」

「すぐに、お供いたしとうござりますが――」

と、老女が強いるようにいった。

雪之丞は、さも当惑したようによそおいながら、ようやくのことで決心がついたというように、三斎の居間を辷って、老女の導くままに、冷たい、薄暗い長廊下を踏んで、やがて、木犀の匂う渡りを、離れの方へと辿っていくのだった。

やがて、渡りを行きつくすと、茶室風の小家になる。

老女は、雪之丞をちょいと振り返って、

「ほんとうに一生懸命おまち兼ねでござります」

四

老女の案内で、この館の中でも一ばん静かな、浪路の病間にはいったとき、雪之丞、緋いろ勝ちの臥床の上に、楚々と起き直っている彼女を一目見て、なるほど公方の寵をほしいままにするだけの、一代の美女だと思った。