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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁
「では、わたしは、この家を、抜け出しましょう――」
「ま、何ということを!」
と、雪之丞は、びっくりしたように、
「このお家を、お抜け出しになる?」
「いいえ、あとで、そなたに迷惑のかかるようなことはせぬ――お城へ二度とかえる位なら、死んでしまおうとまで決心している身、姿をかくしたとて、何で、情深い父上が、しんからお咎めになるでしょう――そなたの名はださず、わたしは、町家に身を堕してしまいましょう」
「いいえ、わたしの迷惑なぞ、少しもいといはいたしませぬが、もし、公方さまのおいかりにふれたなら――」
「公方さまとて、同じ人間――女の魂までも、自由になさることは出来ませぬ。いつぞやもこのわたしは、そなたと一緒に棲めようなら、どのような山家をも、いといはせぬというたはずじゃ」
「浪路さま! わたくしを、それほどまでに――」
雪之丞は、ともすれば、相手の至情、至恋に、哀れさを覚えようとするのであったが、浪路の白い和らかい肌の下には、親ゆずりの血が交うているのだとおもえば、いい難い汚らわしさが感じられて来るのだ。
――このわしに、人がましい心さえ持たせぬようにしたも、みんな、そなたの父親たちの悪業から――わしを怨むな! 父を怨め!