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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

こぞってあの男の味方をしているかも知れない。では、一つ関東風の、鋭い切っ先きというものを、今夜は充分に賞翫して見ようか?

雪之丞は、人間がこの世に生れ出た以上、どんな成りゆきで、強敵を向うにまわさねばならぬかを、知りすぎるほど知っている。そして、剣技と、士魂とを、一松斎や孤軒から訓しえこまれて、その敵が、多ければ多いほど、心を逞ましくすべきだということを覚悟している。一個の男子に取って、いわば、敵は多いほどよかった。そういう場合にだけ、人間の精神力、能力――一切の力は、限りなく発揮されるはずなのだ。

勿論、雪之丞とても、人、今夜、これから自らが瀕むべき危険を想像すると、一種の胸さわぎのようなものは感じるのだ。

しかし、彼は、古来の、秀抜な剣士の、遺して行った歴史に力づけられずにはいなかった。

すべての剣聖は、言いのこしていた。

――百人の敵も、一度に、彼等の力を、一人の我れに注ぐことは出来ぬ。百の力は、結局、一と一との比で、自分に向って来るのだ。恐れることはない。一人一人、それを倒せ。何でもないことだ。

そして、そうした言葉を言い残している古人達は、みんな、実際に於いて、決闘上の、大場面を――大傑作を演じて見せているのだった。