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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

雪之丞は、影のように、ぴったりと、彼にくいついている。

とは、流石に知らぬ、長崎屋、浜川が、露地を出て、かごに乗ったのを見ると、ニタリと、白い歯をあらわして、闇に笑って、

「ふうむ、広海屋に先ばしりをして、告げ事をしようというのだな! おのれ、にくい奴だ!」

――だが、何の!

と、いうように、忽ち、ぐるりと、尻をはしょると、目あての、竜閑町を差して、これは細い抜け道から、抜け道を、夜のけもののようなすばやさで、走り出した。

なるほど、辻かごが、どんなにいそいでも、抜け裏から抜け裏を、駆け抜けたら、この方が、早いにきまっているのだ。

――どうするつもりか?

雪之丞、小褄も、ちらほらと、踏み乱して、軒下から軒下、露地から露地を、目の前を翔りゆく、黒い影をひた慕いに慕う。

とうとう出たのは、掘割を、前にひかえた、立派な角店、――総檜の土蔵づくり、金看板を夜中ながらわざと下ろさず、堂々と威を張っているのが、いわずと知れた広海屋の本店だ。

その前まで来て、白く光る目で、あたりを見まわすようにした長崎屋――

「そうら、見ろ、こっちが早かった!」

もう一度、じろりと眺めて、見つけた天水桶――黒く、太ぶりなのが、二ツ並んだ間に、犬のように潜ぐり込んだ。