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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

一軒焼けで、近所に迷惑をかけねば、それが何より――」

と、さすがに大腹中らしく言って、

「それよりも、これが震えている。早う、温かい着る物と、湯なり、茶なり持って来てくれるがよい」

妻女は、和らかもののどてらなぞを、誰かが運んで来て、着せかけると、いくらか人心地がついたようであったが、ふと、急に思い出したらしく、あたりを見まわすようにして、

「坊はどうしましたでしょう! 坊が、見えませぬが――」

「おおそう云えば、庫前の座敷に寝ていたはずの乳母――誰ぞ、そこらで、すがたを見なんだか――」

と、広海屋が、訊ねる。

「わたくしが、火焔のひびきにびっくりして、目をさまし、大声で火事よ、火事よ――と、叫び立てているうちに、乳母どのが、坊さまをお抱きして、廊下を駆け出したのはたしかに見ましたが――」

と、手代の一人。

「そうか――それはよかった」

まず、焼き殺されぬということが、わかったので、広海屋が、ホッとしたようにいう。

「火には捲かれずとも、こんな寒さに、屋外をうろうろしていたら、大事な坊やに、風を引かせてしまいます――誰か、早く、さがして来て――」

と、妻女は、なおも、気もそぞろに、