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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

雪之丞の目は、涙の奥で、きららかに、きらめいた。

「は」

と、唾を呑むようにして、

「僧形は、土部三斎どの……それに並んだは、大奥にすがっておるとうけたまわる、息女でいられると存じましたが……」

「その外は?」

「その外は、うしろの方に、脇田先生に背きました、例の門倉平馬と申すが、控えておるのが見えました」

と、答えると、師匠は、取るに足りぬと、いうように、頭を振って、

「そのような者は兎に角、そなたに取っての怨敵、一人を除く外はことごとく、あの東桟敷におりますぞ」

心を動かすまいと、あらゆる折に気を引きしめている雪之丞、そう聴くと、思わず、

「おッ!」

と、叫んで、膝を乗り出して、

「して、それは、誰々にござりまする?」

「さ、すぐに、そのように、血相を変えるようでは――」

「おお、あしゅうござりました」

と、雪之丞は、両手をぴたりと突いて、

「お師匠さま、お前をもはばからず、取りみだし、申しわけもござりませぬ。心を平らに伺いますゆえ、なにとぞ、仰しゃって――」

菊之丞は、愛弟子の、思い入った容子を、あわれと見たように、やさしくうなずいて、

「そのように、しとやかに訊ぬるなら、いかにも申してつかわそうが、実は、今日、土部一門の見物があると知ってから、何となく、そなたのための仇敵の一人一人、同座することもないではあるまいと