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Japanische Klassiker mit Furigana

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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme

Aozora Bunko

そして、一寸二寸ずつ静かに徐々と開けた者がある。

「誰じゃ……」

新九郎は油断なく身構えた。

「シッ……」

――それは女の声である。と思う間に、一尺ばかり開けた重い戸の間から、身体を竦めて入って来たのは、お延であった。

「お……」

と新九郎は、そこへすっきり水際立った、寝巻姿の阿娜なのに目をみはった。

「お侍様、お寝れないと見えますのねえ」

お延は後をぴったり閉めて、馴々しく新九郎の近くへ寄って、ふわりと坐った。

「これはどなたかと思ったら、先日お助け下されたお女中でござったの」

「まあ頼もしい。私を覚えていてくれましたかえ」

お延はジッと男をみつめた。

「何で忘れるものでござろう。しかしどう考えてもそなたの云うようなことは覚えがないが……」

「ほほほほほ」とお延は黒豆のような鉄漿歯を紅の唇から笑み割ってみせて、

「あんなことは出鱈目ですよ。ただどうかしてあなたを助けたい一心で、思いついたばかりの嘘でさあね……」

とまだ顔のどこかで笑っていた。

「え、それまでにして何故あって拙者をかぼうて下さるのじゃ。それが拙者には解せませぬ」

「まあそんな野暮は止しましょうよ。女が男を命がけで助けたら、どんな心を持っているかぐらいはおよそ察しがつくじゃないの」