Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(三) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 312.452 Zeichen · 628 Bildschirme
見れば、貂蝉は帳を垂れ泣き沈んでいる。どうしたのかと訊くと、海棠の雨に打たれたような瞼を紅にはらして、
「もう再びこの世で将軍とお会いできないかと思うと泣いても泣いても足りません。行く先誰をたのみに世を送りましょう」と、なお悲しんだ。
「何をいう。おれはこの通り健在ではないか。この城にはまだ冬を越す兵糧もある。万余の精兵もいる」
「いいえ、妾は夫人から伺いました。将軍は妾たちをすてて、お城をお出になるのでしょう」
「勝利を獲るために出て戦うので何も好んで死地へ行くわけではないよ」
「……でも。……でも案じられます。なぜならばお留守をあずかる陳宮と高順とは、日頃から不和で、将軍がお城にいなければ、きっと敵に虚をつかれて乱れます」
「二人はそんなに仲が悪いのか」
「わけて陳宮という人の肚は分らないと、夫人も憂いていらっしゃいます。――将軍、お娘様もおいとしいではございませんか。夫人や妾たちも不愍と思うてくださいませ」
貂蝉は、呂布の胸へひたと涙の顔をあてた。
呂布はその肩を軽く打って、
「あはははは」と強いて大笑した。
「他愛ないやつだ。泣くな、もう悲しむな。城を出ることは止めにしたよ。