Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(三) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 312.452 Zeichen · 628 Bildschirme
美童
一
それに投薬するものは、わたくし以外にありません」
「あっ? ……では毒を」
ふたりは、ひたと口をつぐんだ。その時、室の帳外に、風のないのに、何やら物の気配のうごく気がしたからであった。
美童
一
冬をこえて南枝の梅花のほころぶを見るとともに、董家の人々も眉をひらいた。近ごろ主人の董承はすっかり体も本復して、時おり後閣の春まだ浅い苑に逍遥する姿などを見かけるようになったからである。
「……雁が帰る。燕が来る。春は歩いているのだ。やがて、吉平からも何かいい報らせがあろう」
かれの皮膚には艶が出てきた。眉に希望があらわれている。
(一服の毒を盛って、曹操の一命を!)
正月十五日の夜、吉平のささやいたことばがたえず耳の底にある。その実現こそ、彼の老いた血にも一脈の熱と若さを覚えさせてくる待望のものだった。天地の陽気はまさに大きくうごきつつあることを彼は特に感じる。
こよいも彼は食後ひとり後苑へ出て疎梅のうえの宵月を見出していた。薫々たる微風が梅樹の林をしのんでくる。――彼の歩みはふと止まった。
一篇の詩となるような点景に出会ったからである。
男と女だった。
ふたりは恋を語っている。