Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(三) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 312.452 Zeichen · 628 Bildschirme
二
……将軍、お身もよう無事でもどってくれましたね。どうか生命をいとしんで、皇叔のお行方をたずねて下さい」と、甘夫人も共々、袖を面にあてて、玄徳の生死を案じ、この先、どうしていいか、それすらまったく見失っていた。
一時、曹操に降って、主君のお行方をさがすつもりで――と関羽が交渉の仔細を告げると二夫人とも泣きはれた眼をみはって、
「でも、曹操に随身してしまったら、もう皇叔の居どころが分っても、お側へは行かれますまい。関将軍とておなじこと、その時はどうなさるおつもりですか」
と、さすがにやや気色ばんで難詰った。
二
一夫多妻を伝統の風習としているこの民族の中では、玄徳の室など、至極さびしいほうであった。
甘夫人は、糜夫人より若い。沛県のひとで、そう美人というほどでもない。単に、清楚な婦人である。
美人のおもかげは、むしろ年上の糜夫人のほうに偲ばれる。
それも道理で、もう女の三十路をこえているが、青年玄徳に、はじめて恋ごころを知らしめた女性なのである。
実に今を去る十何年か前。
まだ玄徳が、沓を売り蓆を織っていた逆境の時代――黄河のほとりにたって、洛陽船を待ち、母のみやげにと茶を求めて帰る旅の途中、曠野でめぐり逢った白芙蓉という佳人が、いまの糜夫人であった。