Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

スウィスにっき

スウィス日記

辻村 伊助

Lisez スウィス日記 (スウィスにっき) de 辻村 伊助 (つじむらいすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 216 275 caractères · 410 écrans

Aozora Bunko

が、窓に近い桜桃は驚くほど丈がのびて、あの頃は枯れ残った黄葉が二葉、三葉、不安らしく木枯の風に顫えていたが、見れば生き生きと岳おろしにそよぐ青葉の蔭に紫黒色の実を綴って、その梢を圧して屹えるニーセンの北面には、七月とは云えやっと萌え出たらしい若草の急斜と、樅か唐檜の真黒な木立を貫いて、はすっかけに二条の残雪が光っていた。

日は程なく没り方の雲に隠れて静かな夕暮は来た。暗い湖水のどこからと知らず湧き上って水面に凝集する薄靄は見る見る溢れて、地は静かに夕闇の底に沈んでゆくが、空は却って夜が明けてゆくように刻々と明るくなって、淡い今にも融けて消えそうな山の輪廓が桃花の如く夕陽に――高く、驚くほど高く影し出された。

然しアルペングリューンの見るまに淡く薄れてゆく雪の光の、見れば見るほど、異なった感じを与えるのが、今初めて逢った現象のように、もう前の旅を忘れていたのかと疑えば疑えるほど、遠いかすかな記憶のようにさえ思われて来る。自然は刻々に変りつつある、人はその小さな陰影に過ぎない、山を思う心は瞬時もあの雪から離れてはならないのだ……私は過去を顧みた、そしてアルプの雪に遠ざかったこの幾年が、賑やかな寥しい長い年月であったのを、こうして今しみじみと感じたのである。