Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
スウィスにっき
スウィス日記
辻村 伊助
Lisez スウィス日記 (スウィスにっき) de 辻村 伊助 (つじむらいすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 216 275 caractères · 410 écrans
山を仰いだ刹那湧きあがるかと覚えた歓びはいつか消えて、胸を圧迫する重苦しさをどうすることも出来ない、恰も遠い漂浪の旅から故郷に辿り着いたような寥しさを感ずるだけだ、喜びではない、また悲みでもない、私はハラハラと涙を落して、胸を押えてジッと夕闇の空を見いった……ああ故郷。
その晩はとうとう一睡もしなかった。いくたびもそっと床を離れては窓際に来たが、しーんと寝静まった村の中に、自分ひとり落ちつかないのが不安に感ぜられる許りだ。窓を押せばすうっと流れ込む山の空気が気持よく熱した頬に触れる。野も林も寂として声がない、対岸の灯が蛍火のように明滅する――アルプスの群山は濃い闇に吸いこまれて、空に星は燦として輝いているが、氷の片影すら認め難い。
然し、高緯度の国の夏の夜ほど寝つかれぬ身に楽しいものはあるまい。鐘塔が三時を報ずると間もなく、もう闇の裏にも何となく、朝の近づくけはいがする、ものの動く力を感ずる、森の木の葉は鮮な風に微動し、野の声、水のささやき、ありとある物象は微笑し低吟する。自然は今静かに目ざめて、レスタテメンテに朝の序楽が奏される時だ。明るいほがらかなトーン・クレシェンドの美しい曲、そこに何等哀愁の響はなく、黒鶫の高音が短笛のように鋭い、あのアッフレタンドの旋律だけでもどう聞いても平原の調ではない――