Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 350 912 caractères · 702 écrans
ベッと、彼は馬上から唾を捨てた。いやな物を見た後の不快な生唾がまだ残っていた。――四日前の月の夜、研ぎ上がったばかりの物干竿に、斬けた人間が、さっきの菰を刎ねて、馬の後から尾いて来るような気がする。
「怨まれる筋はない」
彼は、心のうちで、自分の行為に、弁明していた。
炎天を打たせて、彼の白馬は、往来を払って行った。町家の者も、旅人も、歩いている侍も、彼の馬前を避けて、そして皆、振顧った。
実際、彼の馬上姿は、江戸の街へはいっても目につくほど立派だった。――どこのお武家だろうと、人々は見るのであった。
細川家の藩邸についたのは、約束どおり暑い真昼中だった。駒をあずけて、邸内へかかると、岩間角兵衛はすぐ飛んで来て、
「ようお出で下された」
と、まるで自分のことのように犒いながら、
「すこし、汗でも拭いて、お控えでおやすみ下さい。唯今、殿へお取次ぎをする間」
と、麦湯、冷水、煙草盆と、下へも措かない。
「では、お弓場へ」
と、間もなくべつの侍が案内をしに来る。勿論、彼が自慢の物干竿は家臣の手にあずけ、小刀のみで、従いてゆく。
細川忠利は、きょうもそこで、弓を射ていた。