Classici giapponesi con furigana
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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
Leggi 雪之丞変化 (ゆきのじょうへんげ) di 三上 於菟吉 (みかみおときち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 344.083 caratteri · 673 schermate
いられなかった。
「花むら屋!」
と、いう、聴きつけぬ屋号は、江戸ッ子たちの、歯切れのいい口調で、嵐のように投げかけられるのであった。
楽屋に戻ると、あたりの者は、目を輝かして、菊之丞と、その愛弟子とに、心からの祝辞を述べずにはいられなかった。
「親方、これで、いよいよ日本一の折紙がついたわけでございます」
「負けず嫌いの江戸の人達が、あんなに夢中になっての讃め言葉、わたし達は、只、もう涙がこぼれました」
と、弟子どもの中には、ほんとうに、涙ぐんでいるものさえあった。
雪之丞も、勿論ホッとした。
これで、長年育ててくれた恩師に対する、報恩の万分の一を果したと思うと、肩の重荷が、だんだん下りてゆく気がするのだった。
しかし、彼は、言い難い、不安に、一方では襲われている。
胸をとどろかせ、心をおどらして、今日こそ、その生面が見られると、待ちこがれている土部三斎の一行が、二幕目が下りるころにも、場内にあらわれて来ないのだ。
東の桟敷に、五間、ぶっとおして、桔梗の紋を白く出した、紫の幕を吊ったのが、土部家の席にきまっていたが、もうびっしりと、一ぱいに詰まった見物席の中で、そこだけが、ガラ空きだ。